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ONLY ONEの椎葉村に、「かえりたい」を生む拠点施設ができるまで

本の場

2022/07/11

7月6日の「本の場」ウェビナー第5回では、椎葉村図書館「ぶん文Bun」の「クリエイティブ司書」小宮山剛さんをメインスピーカーに、椎葉村役場地域振興課の椎葉豊さんをゲストにお迎えしました。人口2,500人に満たない「日本三大秘境」椎葉村がどんなところで、どんな課題を抱えていてそれに対してどんな対策を取られているのか、そして、どんな経緯で「ぶん文Bun」を含む複合施設「Katerie(かてりえ)」が生まれたのか。
ONLY ONEの魅力に溢れた椎葉村を訪ねてみたい、という気持ちが聴いていて自然につのってくる盛沢山なお話の一端をご紹介します。

ONLY ONEの椎葉村に、「かえりたい」を生む拠点施設ができるまで

椎葉村図書館「ぶん文Bun」クリエイティブ司書 小宮山剛さん

それではここから椎葉村のことについてみなさんにお届けしたいんですけれども、日本で最も美しい村と呼ばれる連合に加盟していたり、民俗学発祥の地、世界農業遺産、神楽の村―しかもここにしかない神楽である、といろんな貴重な資産がある、まあ観光誘客には事欠かない、ただ、遠過ぎてあんまり人が来ない、という村であるわけです。まさに「独立国家」という感じなんですけれども、その椎葉村についてみなさんにも共有していきたいと思います。
まず、椎葉を特色づけるものに「平家落人の里、鶴富姫伝説」というものがあります。それこそ今『鎌倉殿』、或いはアニメで『平家物語』も放送されたばかりということで、「平家」、非常に熱いワードではあるんですけれども、その「平家落人の里」として壇ノ浦から残党たちが逃げてきた山深き里が椎葉であります。古文書『椎葉山由来記』の記述を現代語訳すると、平家の残党がようやくたどりついた山深き椎葉、この隠れ里も源氏の総大将頼朝―大泉洋さんですね―にばれて、那須与一宗高が討伐に向かうように命令される。でも那須与一が病気なんですね、代わって弟の那須大八郎宗久が追討の命を受ける、ということで、大八郎が平家の残党を打ち滅ぼさんとして椎葉に来るんですけれども、こうなっちゃうわけです。

ONLY ONEの椎葉村に、「かえりたい」を生む拠点施設ができるまで

左が那須大八郎、まあ現代人で再現しているわけですが、右は鶴富姫、平家の姫なんですよ。いやいや結婚しとるやん!?、という話なんです。つまり大八郎は、平家の里を打ち滅ぼすために来たんですけれども、あまりにも美しい里の風景、これは吉川英治さんが『新平家物語』の中で現代の理想郷と椎葉を表現しているんですけれども、あまりにも美しい里に暮らすあまりにも美しい姫、まあ姫が美しいかどうかの記述は置いといてですね、姫に惚れこんでしまって結婚しちゃった、しかも子孫までもうけてしまった、ということで、伝説が残る限りでは椎葉村は平家と源氏が仲良く暮らす日本で唯一の村ということです。ロミジュリもびっくり、というような村であります。

そんな魅力いっぱい夢いっぱいみたいな話はしてますけれども、人口は減ってるんですね。人口減少が避けられない構造があるんです、椎葉村には。単なる田舎だからというようなことではなくて、避けられない構造もある、そんなところにも触れつつ、ただ、私たちはここで生きていきたいよ、とここからはそんな話をしたいと思っています。
「かえりたい『郷』で生きていく。」―これが、第6次椎葉村長期総合計画、今年度、2022年度からまさに計画が始まったところなんですけれども、その基本理念なんですね。つまり、私たちは転換期としてこの長期総合計画を実施していく段階にありますよ、という話をこれから述べていきたいと思います。

ONLY ONEの椎葉村に、「かえりたい」を生む拠点施設ができるまで

なんか私も椎葉村で仕事をする以前は、長期総合計画って外部からコンサルが入って他の自治体と同じような、それこそサーフェイスだけは夢いっぱいの計画を立ててコンサルは帰っていく、みたいな、自治体の仕事ってそうなのかなと思ってたんですけれども、椎葉村はさすが、さすがと言うか、これだけの規模だからこそできるのかもしれないんですけど、長期総合計画をみんなでつくってるんですね、ほんとに。
「公」の計画だからこそ、「私」の力が生きている。」、って(スライドに)書いてありますけれども、非常に個人の顔が見える計画になっています。そんな話を、村民参加のワークショップであるとか、村が目指す未来をどうやってことばで表現したのかとか、計画書をどう出すのかひとつとってもみんなでつくろうよという姿勢が溢れてますよ、という話だとか、あと、さっき外部のコンサルが来て…、みたいな話をしましたが、ごめんなさい、外部のコンサルが悪いというわけではない、非常に優秀なコンサルの方もいらっしゃいますが、ただ、椎葉では椎葉の事業者がしっかりコーディネートしているんですよ、という話もしたいと思います。あとは各地区ごと、さきほど椎葉は地区ごとに特色があります、みたいな話をしたんですけれども、地区ごとに計画があるという人間味がどういうところに溢れているか、みたいな話もしたいと思います。

そんな中で、どういう場所をつくりますか?みたいな話をするわけですね。村長とも話をする中で、いいか、小宮山くん、交流拠点施設は―当時はまだ名前は決まっていませんから―「子どもたちのための場所」だぞ、と。はい、よくわかりました、椎葉村長―当時の村長も椎葉さんです、はい。これだけはしっかりしてた、子どもたちのためだぞ、ということだけはしっかりしてました。
で、なんで子どもを大事にするかと言うと、椎葉村には高校がないんですよね。これが、椎葉村で人口減少が進む構造的要因でもある、と。高校になるとみんなほぼ確実に椎葉を一回出ちゃう、だから僕たちは椎葉村からみんなを逃がさないとか、そういう考えではなくて、椎葉村に「かえりたい」施策を打っていかないといけないわけです。

ONLY ONEの椎葉村に、「かえりたい」を生む拠点施設ができるまで

椎葉村役場地域振興課課長 椎葉豊さん

そうですね、「クリエイティブ司書」、うーん、小宮山の話にあったように、図書館をどんなかたちでつくるかっていうのが、正直この交流拠点施設「Katerie」をつくる中で、―まあものすごくタイトな時間の中でつくる必要があったんですね、募集をする段階ではまだ建物自体の設計ができてなかった、当然図書館の設計もできてない状況で、まあふわっとしたかたちだったんですよね。だからもう図書館自体つくりあげていくのも、創造力に任せてやってもらう人をつかまえなくちゃいけない、みたいな感じから、まあまあひねり出して、今思うと恥ずかしいんですけれども、クリエイティブな司書がほしかった、みたいな短絡的な名前だったんです。それに反応して応募してくれたのが小宮山くんで、今はまあほんとに運が良かったなあという感じです。

(「Katerie」ができるまでは村に)気軽に本を読める環境は無かったですね。役場の一室に図書室みたいなのがあって3,000冊くらい本があったんですけど、まあ借りにくい雰囲気で、役場なんか行きにくいじゃないですか。椎葉の人でも、本の好きな人はわざわざ1時間半くらいかけて日向市とかまで借りに行ってた人たちもいました。でも村長が本が好きで読書文化をどうにかしたいって、それはもうけっこう、10何年前にもそういう読書の村にしたみたいな構想が一回あって、それができなくて、で、ぜひ実現したいということで今回やったという、村長の思い入れもけっこう大きかったですね。

参考URL

ONLY ONE SHIIBA
第6次椎葉村長期総合計画

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