6月16日の「本の場」ウェビナー第3回では、荒尾市文化企画課の学芸員野田さんと教育委員会生涯学習課の馬場さんから、新図書館が博物館機能をどのように取り込み、それによって今現場でどんな変化が起きようとしているのかについて語っていただきました。近いようで遠かった図書館と博物館が融合することで、人と人とのさまざまな新しい繋がりが生まれ、興味深い取り組みがたくさん始まりそうな確かな可能性が実感できました。
今回こういったかたちで図書館の中に博物館的な部分が入ったっていうところで、これの意味を考えていきたいと思います。硬いお話になるかもしれないんですけれど、まあちょっと原点に立ち返ってという意味で、この意味を考えていきたいと思います。
地域における社会教育施設の役割っていうことで、冒頭に少し触れましたけど、図書館も博物館も同じ社会教育施設になるんですが、社会教育というのは、学校教育以外で、学習機会を提供して、あらゆる世代の人々が自己の充実と生活の向上を図り人生を豊かにする、そういうことだと思うんです。その中で公民館とか図書館とか博物館は、その拠点となる施設です。博物館は特にその中でも歴史的な資料を収集して調査研究して、その結果を展示公開することによって、人々の知的好奇心を満たしたり、それを元に人々が交流するきっかけとか場所を提供する、そういったことが役割かなと思います。
また、さきほどからご紹介しているように、文化財というのはそこの地域の長い歴史の中で生まれ、育まれ、継承されてきた貴重な財産ですので、それを見たり学習したりすることで、誇りを持つということにも繋がっていきますし、最近では、それがそこの地域の独自性を示すっていうのが面白いということで、観光資源としての活用もされるようになってきてるかなと思います。
でも一方で、博物館にいきなり行くというのはちょっとハードルが高いというか、自分の周りでも、中学生とかそのくらいの頃に博物館へ行こうという友だちはなかなかいなかったですし、図書館よりも少し足が向きづらいというようなところがあるかなと思うので、その中で今回この図書館の中に博物館が入ったっていうのは、行きやすいというか、ほんとにぷらっと行って立ち寄って「へぇ、こんなのあるんだぁ」みたいな感じで、親しみやすいというのがあると思いますし、そういう相互補完的な関係みたいなものをこれから、せっかく入ったのであれば今まで交流できてなかった部分というのも見直して、やっていけたらなと考えています。
究極を言うと、図書館と博物館には地域を担う人材を育てていくという共通の目的、役割があると思うんです。今まで司書さんとやり取りしたりとか、司書さんが郷土史のどういう本があってっていうのをご存じだったのか、そういうのにこっちもぜんぜんタッチできてなくて、交流がほとんどない断絶してる状態だったんですけど、早速今月の休館日に司書さんの方に、今回入った「郷土の部屋」と「みんなのひろば」に展示してある物について紹介をさせていただく機会を設けてもらってます。そこで説明しつつ、たとえばこれについて見るんだったら反対側の本棚のこの本に書いてあるよだとか、そういったかたちでこれから交流をしていって、図書館を育てていきたいと思っています。
宮崎滔天がいろいろ考えたことも、執筆活動を彼がやっていて、その資料が残っているから、今でも私たちが、彼が当時どういうことを考えていたのかというのを見ることができるんですけれども、その中でやはり彼が高く評価されているのが『三十三年の夢』っていう本を書いたことです。この本がひとつきっかけになって中国人の留学生の子たちが孫文の存在を知って、それがまた中国語に翻訳されて、中国の方でも2種類くらい翻訳が出て何回も何回も版を重ねられてってことで、孫文の下に中国人の仲間が集まって、それが最終的には辛亥革命の成功に繋がったっていう歴史があります。それを今度デジタルに載せることで、最終的には世界平和と言ったら大きいですけど、そういう知識を子どもたちに身につけてもらうっていうのもすごく意味があると思いますし、この勉強をしていったら「そんな人が郷土にいたんだ」ということで誇りを持ってくれると思うので、地域の担い手が育っていくんじゃないかなと期待もしています。
もともと素材として私は魅力があると思っていたんですけれども、なかなか説明が難しいというか、当時の世界情勢はというのを、まだ小学生とかだと日本の歴史くらいしか習わないというのもあったので、それをこの「デジタルライブラリー」で漫画で紹介できるのは、とてもありがたい良いかたちになったなと思います。これから学校で、いま一人一人子どもたちにタブレットがありますので、まず郷土学習でやり始めるときに、タブレットでこの漫画を見てもらっておくと、より学習の内容が深まっていくのではないかという期待もしています。その中にこれまで郷土学習で取り組んできた現地学習とか出前講座とかも絡めていって、ここを拠点にしながらいろいろ広げていって、地域の担い手を上手く育てていけたらな、というふうなところでやっています。
やはり市長からいきなり「新図書館には郷土資料室をつくって」という命題が来た時には、たぶん野田もそうだし私たちもそうだし、やっぱりどうしても文化企画課と生涯学習課とでは分野が違うので「えぇっ?」っていう感じはあったんです。けど、やっぱり市長は市民の方からのお声も聴くし、たぶんいつも全体的に見てるっていうのが大きい、やっぱりそこかなと思って、全体的に見ると「これとこれが一緒になった方が良いんじゃないか」みたいなちょっとした感覚みたいなので「つくってね」とおっしゃったのに、私たちは「ええぇっ?」と思ったけれども、ここは文化企画課とちょっと話をしながら、ここは…とか言いながら、いろんなことを話しながら、お互いにいろんな情報をもらいながらやっていったっていうのが非常に大きかったと思います。
「みんなのひろば」のパネルのうち「魅力をつたえる」というコーナーには干潟とか観光の施設とかもあるので、そちらを担当する部署からも情報をもらったり確認をしてもらったりとかするときに、お互いやりとりをする中で信頼関係を築くというか、もともと同じ役所の人間ではあるんだけれども、お互いチームワークみたいなものができてきて、いま設置しているパンフレットはたくさん人が来てどんどん出ていっていて、「ちょっとパンフレット頂戴!」と言ったらどの部署もすぐ準備してくれたりとか、そういう、仲間が増えたような、巻き込んだことでみんなが仲間になっていったという感じはすごくします。
「みんなのへや」もいま市役所のいろんな部署に活用してもらうように声を掛けていて、万田坑の世界遺産の検定をするのに市民向けの講習会が始まったりとか、市の施設として、市役所の職員がそういうところを活用して市民に何かサービスを行っていく、というようなところになりつつあるかなと思います。
なによりほんと「郷土の部屋」にすごく人が行っているのが、最初部屋の配置図を見た時にいちばん奥にあったので心配したような、位置関係だけのものではないなぁと、人の動きって机の上で想像するものとは違うなぁとすごく思いましたね。
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