WEBINAR

第47回 2023/9/29(金)19:30~
『本屋、地元に生きる』を著者・栗澤順一さんと一緒に読む ― 本で地域を豊かにするとはどういうことか

OUTLINE

本屋、地元に生きる

2023年2月、岩手県のさわや書店で外商を担当されている現役書店員・栗澤順一さんが書かれた『本屋、地元に生きる』という本が出版されました。帯には、こんな文言が躍っています。

「外商」という立場で切り拓いた
新たな収益源と地域での存在価値

ページを繰ると「はじめに」で、栗澤さんがこの本を書かれた動機が次のように綴られます。

書店といえば“お客さんを待つ店”というイメージが強いのだと思います。しかし、みずから何も動かず、ただじっとしているだけでは、地域ごとにある書店はシュリンクしていく一方です。
コロナ禍によって書店の危機意識はいっそう強くなりました。これまでどおりのやり方をしていてはどうにもならないと感じている人は決して少なくないはずです。
イベントの開催といったことに限らず、何かのアクションを起こしていかなければ先がないのではないか。
それが今回、この本で考えてみたいことでもあります。

 (p.6)

「本の場」ではこれまで、主に公共図書館や学校図書館に焦点を当てて、さまざまなユニークなやり方で図書館が地域に貢献するすがたを追ってきました。栗澤さんのこの本を読むと、普通の書店外商のイメージにまったく収まりきらないその活動や志が、図書館の理想のアウトリーチ活動のあり方にオーバーラップして見えてきます。地域を本で元気にするのは、図書館の専売特許でも何でもなく、むしろ書店だからこそできる取組みがこんなにたくさんあるんだということに、何度も繰り返し驚かされます。

9月29日(今回は木曜日ではなく金曜日になります)の「本の場」ウェビナーでは、著者の栗澤さんをお迎えして『本屋、地元に生きる』の読みどころをみなさんと一緒に味読していきます。

図書館も学校も書店も、拠って立つ地域そのものが豊かにならないと最悪消滅してしまうという点では、利害は或る意味一致しているはずです。そして、その地域が豊かになるかどうかと、その地域を豊かにしたいと本気で思っているプレーヤーの数や知恵と行動の量は、おそらく或る程度比例しているものだと思います。

この本を既に読んでいる方も未だの方も、図書館員も書店員もその他出版関連の方も、栗澤さんの生の声で、“本に関わるすべてを扱う総合商社”の実像に接してみませんか。

以下にいくつか本書から印象的なくだりを抜粋してご紹介します。地域と本に関心のあるさらに多くの方々がこの本を手に取るきっかけになれば幸いです。

会長がよく口にする「地域のためになることを考えろ」という言葉にも共感できます。私の現在の動きについては次章以降にまとめますが、いまの私のテーマはまさに「地域貢献」であり、「地元貢献」なのです。

 (p.46)

書店にはもともと“ほかの小売業にくらべて信用度が高い”という特性があります。そのため、公共的な企画にも声がかかりやすくなっているわけです。
こうした際に協力を惜しまずにいれば、地域における接着剤のような役割を果たすことができるのではないかと思うようになりました。
この部分をさらに突き詰めていけば、「店頭販売」と「配達業務」という書店の二大販売方法に加えられる第三の方法論が見出せるのではないかとも考えられます。

 (p.52-53)

 町の中で、町に住む人たちとともに、実を育てていく――。
それが、さわや書店の現在地です。

 (p.61)

まちの本屋として、関連書籍のコーナーをつくるだけでいいのだろうかと悩みました。そのうえでたどり着いた答えが、被災地に足を運んで本などをまとめた作家などを招いて、リアルな様子を語ってもらう機会をつくることだったのです。そうすれば盛岡や内陸のお客さまにも被災地の現状がより具体的に伝わるに違いないと考えました。
それからフェザン店にとって最大の挑戦が始まりました。
連続講演会「いまこそ被災地に思いを!」の開催です。

 (p.96)

私が育ったのはとくに商売をしている家が多かった地域でした。みんなで遊ぶときには、名前でなく「○○屋」などと店名で呼び合っていたくらいだったのです。
地域で唯一あった書店で『少年ジャンプ』を買い、何かがあれば近所の中華料理店からラーメンや餃子を出前してもらい、家族で食卓を囲んだものでした。
ただ、そうした時間は永遠に続くものではありません。
やがて転校していく友達も出てきてしまいました。時代の流れの中で、それぞれの商売は厳しくなっていったのだと思います。いつまでも続いているお店はごくわずかになっているのが現実です。それでもあの頃は間違いなく、地域で経済が回っていました。

 (p.112-113)

自分たちで講演会を開催するようになると、外部の主催者側から「講演会を開きたいのですが、講師に心当たりはありませんか?」、「この人とつながりはありませんか?」と相談を受けるケースも増えていきました。
公共図書館もその一つです。二〇二二年は県立図書館の「創立一〇〇周年」に当たるということで、記念トークショーを開催。このときは映画化もされた『孤狼の血』(角川文庫)、直木賞候補作『ミカエルの鼓動』(文藝春秋)など数々のヒット作を生み出した岩手県出身の作家、柚月裕子さんを迎えることができました。

 (p.117-118)

この事務所では月に一度、スタッフそれぞれが読んだ本の報告会を行い、それを社内報にも掲載しています。それくらい読書の習慣化を大切にしています。
この試みを続けたことでスタッフみんながビジネス書に馴染みをもつようになってくると、次のステップへと進みました。
「経営力パワーアップセミナー」の開催です。
地方の事務所としては大胆な企画といえるかもしれません。年に一度、ビジネス書作家の方などを講師として招いてのセミナーを行うようになったのです。事務所スタッフだけが受講するわけではなく、お付き合いのある会社の関係者が無料招待されています。

 (p.132-133)

たとえば、という話として、私が外回りをしている最中に「手軽に買える南部鉄器はないですか?」と相談を受けたとします。普通に考えれば、「書店員にそんなことを聞かれても困りますよ」と首を傾げつつ、「他の誰かに……」と答えるものでしょう。
しかし、私はそこで南部鉄器を紹介できるのです。それまでの物産展開催やPorta Magicaを通じて、南部鉄器を扱う会社との関係性ができているからです。その会社を紹介する段階でさわや書店としての売上げにはならなくても、先につなげられます。

 (p.138)

私たちのもとには二、三か月に一度くらいの割合で自費出版の相談がもちかけられます。内容次第ということや、私の手が回らないこともあり、常に協力させていただくわけではありません。ただし、本にすべき内容だと考えた場合には、全面的に応援させていただきます。場合によっては、出版社とつないだり、内容面などでアドバイスすることもあります。
さわや書店でヒットすれば収益になるとはいえ、なかなかそうはいきません。
それにもかかわらず、出版のお手伝いをしているのはやはり書店員の仕事の枠を超えているのだとは思います。
経験値が少ないので、たいした力添えはできません。それでも、このまま眠らせておくべきではないなと感じる話や情報があったときには「本にしたいな」という思いがふくらみます。『はつらつ人間力』や『福田パンものがたり』は、そういう気持ちから生まれたヒット作、成功例だといっていいはずです。
全国的にも、出版に関する地産地消が進めば、書店業界も活性化するのではないかと考えています。

(p.177)

SCHEDULE

『本屋、地元に生きる』を著者・栗澤順一さんと一緒に読む ― 本で地域を豊かにするとはどういうことか

2023/9/29 (金) 19:30~21:00

※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。ウェビナー終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。

メインスピーカー

栗澤順一さん さわや書店 外商部兼商品管理部部長

参加料

400円(税込)
または月額780円(税込)のサブスクリプション

※毎月2~4回のウェビナーに参加できます。(9月は2回開催です。)

会場

Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。
お申込みいただいた方には、前日までに参加URLをメールにてお送りします。

お申し込み

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チケットの購入期限は当日9月29日の18:00までとさせていただきます。

主催

本棚演算株式会社

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