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業は時代の要請―椎葉村での仕事の流儀

本の場

2022/07/25

「才能とか能力じゃなくて、マルチタレントな仕事を自分で創るぞ!という意識を、チームや組織に浸透させるぞ!そのための企画書を書くぞ!という覚悟ですよね。」
7月20日の「本の場」ウェビナー第7回は、「秘境への移住者たち―これからの司書と地域おこし協力隊に共通して求められるもの」と題して椎葉村編第3週をお送りしました。「クリエイティブ司書」小宮山剛さんが今の時代を生き抜くために必要な仕事観を熱く語られ、ゲストの上野諒さんからは地域に必要な次の一手を官民連携でしなやかに形にされていく椎葉村の手法が伺えました。
これからの司書の働き方、図書館と地域のあり方を考えていくのに、椎葉村でのさまざまなチャレンジからは深く多角的な刺激と希望がもらえる気がします。

以下に抜粋の書き起こしをお届けします。

椎葉村図書館「ぶん文Bun」クリエイティブ司書 小宮山剛さん

でまあ、クリエイティブ司書どんな仕事をしてますかっていう話に進んでいくんですけど、村のミッションとして与えられた仕事は図書館のクリエイティブ、創造、図書館創ってくださいねっていうことをミッションとして与えてもらったんですけれども、そこにやっぱ僕としては、地域おこし協力隊って自由に働ける身なので、自由が与えられてるっていうことはそこに自分が何をするかを付け加えなきゃいけないなと思いまして、図書館を通じたブランディングのコンテンツディレクターって(スライドに)ついてますけど、椎葉村内でこんなこと言ったことないんです。おじいちゃんたち「はあぁ?」ってなるだけですね。まあ図書館を通じてブランディングをしていくんだという、まぁもっと、一図書館職員ではない業務をしっかりやっていこうね、だからこそUIターンを生む図書館みたいなとこに繋がっていくんですよね。これはあくまで自分で生みだした職業であるということですね。

複業は時代の要請―椎葉村での仕事の流儀

で、クリエイティブ司書の仕事をざっと、僕の頭の中を占めている要素を書き出してみました。左っ側の白丸がたぶん図書館司書さんみんなやってるんじゃないかなぁっていう仕事、ウェブ書いたりイベント企画したり選書したり発注したりシステムの登録ピッピッってしたり、ディスプレイ、これ本ですね、図書館用語でいう配架だと思ってください、SNSの発信をしたり展示の企画したり事例の発表を他館様に向かってやったり、なんてことはやってるかなと思います。他館連携は図書館用語でいう相互貸借、他の図書館さんに本を貸したり貸してもらったりする。
で、右の業務がクリエイティブ司書業務かなぁと思ってます。ブランディング、図書館がどうあるべきかコンセプトを決めるためにキャッチコピーを書いたり或いはそれがSNS全体として上手くいってるかを監督したり、まあそういう数値的な管理を含めるとコンテンツマーケティングとブランディングは非常に、一緒と言えば一緒ですけれども(スライドでは)ちょっと分けて書いています。あとこういった講話・講演をする司書さんもいるけど少ないのかなと思って分けてみました。それから他業種連携ですね、これはあとで話します。面白いことがあるので。館長業務、これはあれかな、別に書かんでよかったかな、なんか館長みたいな仕事もしてます。であと関係人口の創出とかはうちの図書館のコンセプトがあるからこそする、すべきことなのかなと思います。あと、開館2年であんなに有名どころを、いっぱい作家を呼ぶとは思ってなかったので、これもまあ特殊と言えば特殊かなぁということで。東京の図書館じゃないですから、秘境の図書館ですから。ようみんな車で来たなぁと思ってます。青山美智子さんはオンラインだったんですけれども。

複業は時代の要請―椎葉村での仕事の流儀

ま、そんな業務の一個一個を、どういうことしてますかということでご説明していくんですけども、ブランディング統括/コンテンツマーケティング、ひとつにまとめるとこれだけのアカウントを回してますよっていう感じですね。個人のnote、個人のSNSとかnoteも僕は仕事として見ています。公的なものとして全部実名でやってます。個人note、図書館のウェブ、Katerieのウェブ、まあ全部ブログを書いてますよという感じです。ブログ3本管理して、Katerieのツイッター管理して、で、コハチローのツイッターは彼自分でやってますんで指導をしているというかたちですね。Katerieのインスタ、これはスタッフみんなで投稿してるんですけれども、数値管理と図書館部分の投稿やってるっていうかたちです。あと個人のインスタ。あとフェイスブックがKaterieと個人とあるって感じです。なので、やっぱり合計のフォロワー数が1万人くらいいないとSNSとしてのバリューが生まれないなというところで、アカウントたくさん作っていろんな方面で発信をしていく、と。フェイスブックとインスタってフォロワーの属性ってぜんぜん違いますので、それぞれの特徴に合わせた発信をしていく、っていうことをやっています。ま、たぶんこれだけで人一人つけられるんじゃないかな、っていう気はしてます。あ、ちょっと甘いかな。人一人はつけられないかな。広報担当が一人つくって感じですかね。
他業種連携としては、これけっこう面白くてですね、「宮崎本大賞」、明日もこの会議があるのでこのあと準備するんですけど、この「宮崎本大賞」のブランディング担当的な、企画担当的な立場で関わらせてもらってます。こういう、本屋さんで本を売るための「宮崎本大賞」なんですけれども、ここに図書館の職員として関わっているっていうのは非常にクリエイティブ司書だなぁという感じがしますね。なので僕も図書館で本を貸し出しするたびに、「できたら書店さんで買ってくださいね」みたいな、なんかこう、何の回し者なんだろう、みたいなことも言ってますけれども、買うことで生まれる喜びってあると思いますので、そこは大いに協力できるところなのかなぁと思います。

僕は、「ことば」で仕事を表現してます。なんかこう、やりたいんですよぉ、みたいな相談じゃなくて、「ことば」で事業の在り方を方針づけるコンテンツディレクターとして業務を進めてるから、そういうこともできるんだよ、ということですね。だから、図書館司書という肩書も、椎葉村役場の主任主事図書司書という肩書なんですけれども、やってることは非常に業的、さっきの「複数の業」ですね、業的であるし、そうでなければならないと思ってます。司書司書、小宮山さん司書だよね、という話なんですけれども、それだけではないし、それだけであり続けることは不可能じゃないかなと思ってます。

複業は時代の要請―椎葉村での仕事の流儀
なので、そういう仕事をするためには、これコハチローが言ってますからね、別に僕が言ってるわけじゃない(笑)、「かけよきかくしょ、きかくしょかけよ」って言ってますけれども、やっぱり事業の根拠だったり事例だったり展望を、ちゃんと上長だったりチームだったり、或いは上の組織に説明するためには、ちゃんと文字にして言ってますか、っていうことを、僕は地域おこし協力隊の仲間だったり図書館司書の方にはお伝えというかお願いしたいですね。やっぱり相談ベースで仲間内で口頭だけでやりとりしててもぜんぜんコトは進まないし、私はこういったことがやりたいっていうのを、私頑張ってるすごく頑張ってる、みたいなことを伝えても、それだけじゃ事業ってドライブしていかないんですよね。この前太田(剛)さんが前回の「本の場」で、私の企画が通らないって言ってる時点でダメなんですよ、って言い切ってましたけれども、さすが、言っちゃうなぁ、って感じですね。「私の仕事」って言ってる時点で、それは仕事ではないんですよね。あくまで、これ僕たちが公共をやってるからではなくて、仕事というのは人を巻き込みお客様に伝えお客様に対価を払わせるとか来てもらうとかですね、そういったことを求めるだけの力を持つ企画を立てなければならないので、それを甘い覚悟で動かしていてはいけないな、というのは思います。なので、ヒトコトモノカネ一括してお示ししたり、なあなあで終わらせない、きちっと最後までやり遂げるビジョンを描くためには、企画書、というか、アイデアベースで物事を動かすんじゃなくてちゃんと人に「こういうこと考えてまっせ」ってかたちで示すための企画書ありきで仕事を動かす癖っていうのを考えてほしいかなと思います。

合同会社ミミスマス(椎葉村地域おこし協力隊OB) 上野諒さん

複業は時代の要請―椎葉村での仕事の流儀
(上野さんはKaterieの中のコワーキングスペースにも関わってらっしゃるんですか?という質問に対して)
自分が地域おこし協力隊の最終年度のときにKaterie設立準備っていうところだったんですね。携わったというよりは、周辺で少し関わったっていうくらいです。コワーキングスペースができるっていう話を聞いたときに、けっこう「やべぇな」って率直に思って、日本三大秘境にイケてるコワーキングスペースがあって誰が使うねん?ってみんな思うだろうなぁと思ったし僕も思ったんですね。で、そのときワーケーションなんて言葉もないですし、正直言うと担当の方の話を聞いて、ほんと、どんな感じですかぁ?っていう、で、僕はぜんぜんビジョナリーでなかったってことですね。やっぱ担当の方がいま課長になられましたけど非常にビジョナリーな方で、そういう時代が来るからもう準備するんだ、っていう。で、その話を聞いて、起業の誘致とかワーケーションの誘致っていうのを協力隊の最終年度でさせていただいた、それでまあ少しリンクしたお仕事をさせていただいた、っていう感じですかね。

(ワーケーションを推進していって関係人口は増えていきましたか?という質問に対して)
椎葉村からワーケーション事業を去年まで受託をしていてお仕事してたんですけど、僕らとしては、個人のフリーランスの方っていうよりも、企業向けのワーケーションを推進してきてました。企業単位で来てもらおうと。理由としてはワーケーションを推進すること自体が目的ではなくて、ワーケーションは手段であって、何をゴールにするかっていうところを協議していって、いま椎葉村のワーケーション事業としては、企業と自治体との連携にもっていく、目的としてはそういうところに置いていたので、それで企業誘致に繋がったっていうことですね。ワーケーションに来ていただいた企業がそのまま企業立地してくれたっていうとこです。一般の方はけっこう観光推進っぽいところでワーケーションを捉えられていて、いっぱい人が来てお仕事して観光もしてくれて良かったね、っていう話なんですけれども、それだと、ワーケーションって言葉もどの自治体も使っててレッドオーシャン化してるんであんまり面白くないんで、僕らとしては「手段としてのワーケーション」ってそういうふうに設定してやってきてます。なのでまあけっこう地味っちゃ地味ですよね。
パッケージでなんかサービスがあるわけじゃないんですけど、ワーケーションで企業さん来てください、でまあ来ていただいて、椎葉村のことを試験的に、何て言うんですかね、まぁ堪能してもらって、で帰っていくっていう感じで、だいたいは単発で終わりがちです。ただ目標としてはそのあとに、行政の方との連携とか、地域課題を知ってもらったうえでウチの会社のノウハウがあればこの課題なら解決できそうだけど何か一緒にやれませんかね、って企業さんに思ってもらえるようにアテンドする、っていうイメージですかね。

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